愛しいキミへ
風邪をひく俺を見て、コロコロ笑う沙菜には、何も言い返せなかった。

クーラーつけっぱなしで、上半身裸で、長時間電話してたせいだ〜

「…あんまり、心配させないでよね。」

ベッドの端に座ったまま、俺を覗き込みながら、ハンカチで汗を拭いてくれた。
さっきまでの笑い方と違い、優しく微笑んでいた。

汗を拭いてくれている手に触れ、止める。
怒らせてしまったことを、なかったことにしちゃいけない。

「…沙菜。さっきは、ごめんな。」
「さっきって…もう昨日なんですけど?」

─はッ!?
寝てるうちに、朝になってたらしい・・・。
どんだけ寝てたんだ。

「…マジかよ〜。」

がっくりとする俺を見て、また沙菜は笑い、汗を拭くのを再開した。

「雅樹の気持ちわかったから、もう良いよ。ただ、次に無神経なこと言ったら許さない。」
「沙菜…。ありがとう。ごめんな。」
「もう気にしないで良いから、早く風邪治しなさい♪」

優しい言葉とともに、にっこりと微笑み掛けてくれた。
その笑顔が愛しくて・・・。

「…沙菜。」
「ん?なに?」

俺に呼ばれたことで、次に続く言葉を聞こうと、覗き込む体勢のまま、少し俺に顔を近づけた。
沙菜の首の後ろに手を回す。

「雅樹?」

沙菜の言葉を遮る様に、ぐっと手に力をいれて、沙菜の顔を引き寄せた。
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