愛しいキミへ
初めて重なりあった唇。

柔らかく、幸せな感触だった。

軽く触れただけのキス。

沙菜との初めてのキス。

人生で初めてのキスだった。


手に入れていた力を抜く。
重なりあっていた唇が離れる。
目を開いて、驚いている沙菜。
首の後ろに回していた手を、沙菜の頬に持っていく。
柔らかな唇に軽く触れる。

「…ごめん。いきなり。」
「…ううん。」

頬を赤く染めて、目を合わせようとしない沙菜。
理性を抑えられなかった自分に、後悔する。
今は、関係を急かしちゃいけなかったのに・・・
でも──

「…沙菜が可愛くて、好きすぎて、キスしたくなった。イヤならもうしないから…嫌わないで。」

本当の気持ちだったから。
伝えたかった。

「…ヤじゃないよ。」

消えそうなほど、小さな声で囁かれてた言葉。

「…え…?」
「イヤじゃないけど…びっくりしたの。」
「沙菜…。」

耳まで赤く染めて、沙菜も素直に自分の気持ちを言葉にした。

「…雅樹に好きって言ってもらえて嬉しいよ。」

俺を真っ直ぐ見ながら、にっこりと笑ってくれた。

やべ・・・
すっげぇ嬉しい
俺だけに向けた笑顔で、俺の気持ち嬉しいって・・・。
好きって言われたわけじゃないけど、言われた気がした。
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