愛しいキミへ
「…あのさ。」

イヤがる、嫌われるって思ってたから、嬉しさで浮かれたのかもしれない。
いや・・・
熱で自分が何を言っているのか、わからなくなっていたんだ。

「なぁに?」
「…もう一回、して良い?」
「え!?」

照れもせず言う、俺を見て焦る沙菜。
その姿さえも可愛かった。

「…ダメ?」

目線は逸らさない。
真っ直ぐと沙菜の目を見つめて尋ねた。
ベッドから起き上がる。
起き上がると、さっきまで見上げていた沙菜の顔が、俺の目線より少し下にあった。

「…一回だけだよ。」

顔真っ赤にして、小さな声で答えた。

──ドキドキ
今さら、心臓が飛び出そうなくらい、胸打った。
沙菜のあごに手を添え、少し上を向ける。

目を瞑る沙菜。
ゆっくりと顔を近づけた。

心臓の音が聞こえてしまいそうだ。


──再び触れた唇
自分の心臓の音しか聞こえなかった。


──ちゅっ

小さな音をたて、二人は離れた。
照れて、お互い何も言えず黙っていた。

・・・キスで照れるって、俺何歳だよ

仕方ないんだ。
ずっとずっと、キスをしたいと思っていたのは、沙菜だけだった。
無理なファーストキスだと思ったから、嬉しすぎて・・・。

「沙菜…大好きだよ。」
「ありがとう。」

きゅっと抱きしめて、静かに告げた。

──二人が恋人に近づいた日だった。
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