愛しいキミへ
キス───
思い出すだけで顔が熱くなる。
沙菜の唇の柔らかさ、暖かさが、いまだに俺の唇に残っている。

「…それだけ?」

話を聞いた直哉は、キョトンとした顔で俺を見ていた。

「それだけって…他になにがあるんだよ。」
「…いや…ちょっと待て…雅樹と沙菜ちゃんだもんな。当たり前か。」

そうか。うん。
直哉は一人で納得して、一階の台所へ飲み物を取りに降りて行った。

─・・・なんだよ?

戻ってきた直哉は、コップに入ったコーラを渡してきた。

「サンキュー。てか、一人で納得してたけど…何を期待してたわけ?」

聞きながら、受け取ったコーラを早速飲む。
炭酸がシュワ─と体に広がった。

「…ほら!俺らも一応高校生じゃん!?18歳の男の子じゃん!?」

コーラを飲む俺の耳元で囁いた。

──ぶっ

直哉の言葉で思わずコーラを吹き出す。

「ちょっ…雅樹きたねぇなぁ〜。人の部屋汚すんじゃねぇよ。」
「は!?お前が変なこと言うからだろ!?」

ゲホッゲホッ
咳き込む俺に見向きもせず、ティッシュで濡れた床を拭きだす。



──囁かれた言葉

【Hしちゃったかと思ってた】





「ゲホッッ!ゴホッッ!!」

飲むと心地いい炭酸も、変なところに入ると厄介なものに変わった。
いつまでも咳き込む俺の背中をさすりながら、ケラケラと笑いだすのは、この咳き込む原因を作った男。

「そんな驚かなくても!いや〜雅樹から男の色気が出てたからさぁ♪」
「─…お前なぁ〜。」

咳き込みすぎて、涙目になった俺を見てさらに笑いだす。
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