愛しいキミへ
「なんだよ。痛いっつーの。」
「えっ!?お前、若井と付き合ってんの!?」

そういえば言ってなかったっけ・・・
驚くタケをよそに沙菜がそばまできた。

「お待たせ~。あれ…タケくん?久しぶり。…二人で遊んでたの?」

タケに気がついた沙菜はキョトンと聞いてきた。
話しながら、走って乱れた髪を直す。

「違う。今たまたま会っただけ…ってなんだよ?」

急にタケに腕をひっぱられ、沙菜と離れたところまで連れて来られた。
さっきまでとは違う小さな声で喋りだした。

「お前…由香利ちゃんはどうした?長く付き合ってたじゃん。」
「…三月に別れたよ。」
「別れたって…だからか…。」

なんだよ?と聞くと、沙菜の様子を伺いなが小声で話し続けた。

「ほら、俺は学校一緒じゃん?雅樹と仲良かったからか、よく話しを聞いてたんだよ。相談にものってたし。それなのに、春ぐらいから避けられるようになって…見かけるたびに、何か元気なくて…携帯を開いて見つめてることとかあったからさ…。原因はお前か。」

学校での由香利の様子を聞いて、何も言えなかった。
タケの言う通り、原因は俺。
携帯を見てたのは、きっと俺からの返事を待っている姿だ。

「…しかも若井とって…お前、好きだなって言ったことなかったじゃん。」

確かに・・・悠兄と付き合っていた沙菜への気持ちは、誰にも言っていなかった。
それほど、繊細で大事な気持ちだった。
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