愛しいキミへ
当然だよな
俺から呼び出しておいて放置してんだもんなぁ・・・

「ごめん…。」

部が悪くて小さな声で謝ると、沙菜は返事もせずにスタスタと歩き出した。
かなり怒ってるかも・・・と、思って自分のしたことにため息をついた瞬間、くるっと振り返り俺の前までやってきた。

「なんて顔してんのよ。」
「へ?」

クスクスと笑う沙菜を見て、思わず拍子抜けした声を出してしまった。

「別に怒ってないよ。タケくんと会うの久しぶりだったんじゃないの?」
「そうだけど…本当に怒ってないの?」
「そりゃ…ほっとかれて少しはムッとしたけど…。」

少し口を尖らせて話し、すぐにパッと笑顔になって話を続けた。

「久しぶりに友達に会ったら話したくなるのはわかるもん!私も今、久しぶりの友達と会ったら雅樹みたいにすると思うし…だから怒ってないよ~!」

ころころと笑いながら話す沙菜にホッとした。
友達と会って嬉しくなる気持ちをわかってくれていたことが嬉しかった。

「…でも、放置したのには変わりないんだから…デザートまでしっかりおごってね♪」
「了解しました。」

怒ってないと言いながらも、お詫びを要求するところはしっかりしているな・・・
自分のお気に入りのパスタ屋に、相談もなく向かっていく沙菜を笑顔で追う。
友達と過ごす時間も良いけど、やっぱり沙菜と過ごす時間は幸せさが違う。
でも、直哉とかタケ・・・支えがあるからこの幸せがあるんだと、思えた日だった。





勉強ばかりだったが、笑顔で過ごせた高校最後の夏がもうすぐ終わる───
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