愛しいキミへ
進路
「…じゃあ第一志望は変えないんだな?」

夏休みが終わりを告げ、九月になった。
まだまだ夏の蒸し暑さが残っていて、毎日息苦しくなる。
そんな今、俺は担任の男教師と二人きりで話している。

「変えるつもりはありません。そのつもりで勉強してきました。」

俺の返事を聞いて難しい顔をする先生。
ここは進路相談室。
受験が近くなってきて、個別に進路の最終確認をされていた。
向かい合う俺と先生の間にある机には、夏に受けた模試の結果や進路希望調査表が乗っている。

「藤川は成績いいのはわかってるんだが…この結果を見るとなぁ~。」

難しい・・・と漏らす担任の声を聞いて悔しくなった。
頑張ってきたつもりだったが、第一志望の大学には成績が足りない状態だった。
そのため、志望を変えないかと話しをされているところだった。

「落ちる覚悟で受けたいんです。」

滑り止めの大学も、レベルは低くない。
だったらこっちを第一志望にして、目指すべきだ。
色々と提案をして勧めてくれる先生の話を、頑なに拒む。
そんな俺を見て深くため息をついた。

「…そんなにまでこの大学に行きたいなら、手を抜かずに勉強するんだぞ。」
「はい。」

模試の結果だけ受け取り、部屋を出る。
冷房が効いていた部屋とは違い、廊下にはムワッとした熱気があった。
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