愛しいキミへ
俺の話を聞いて、さらに不安そうな顔をする直哉。

「…それ他人事じゃないんだけど…。俺もそうなりそう~。」

暗い雰囲気が漂う。
大学受験なんて、少し勉強すればすぐに終わると思っていたが、そんなに甘いものではなかった。
近づいてくればくるほど、追い詰められて暗くなってしまう。
高校受験とはプレッシャーが比べものにならない。

「直哉~!!待たせた!!お前の番!!」

教室の後ろからクラスメイトが呼び掛けた。
きたかぁーっと、言葉をこぼして席から立つ。

「広瀬!!お前時間掛けすぎなんだよ!!…じゃあ行ってくるわ。」
「おう。頑張れ。また明日な。」

教室を出ていく直哉の後ろ姿は元気がなかった。
・・・受験なんて早く終わればいいのに
そう思いながら、さっき貰った模試の結果を見る。
志望校の合格率【E】判定。
他の大学で良いものは【B】判定だ。
・・・勉強はしていたのにこの結果だった。
無意識に結果を握りしめた。
ぐしゃっと音をたてて、シワがついた。

「雅樹~!ごめん。お待たせ!」

ハッとして顔をあげる。
沙菜が教室の入り口から顔を出して呼んでいた。
笑顔を作り、持っていた模試の結果を鞄に入れ沙菜のもとに急いだ。
ニコニコしている沙菜の笑顔に癒される。
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