愛しいキミへ
コンコンッ
「雅樹~。ケーキ買ってきたんだけどいる~?」

突然のノックの音と母さんの呼び掛けに驚いて、沙菜と離れた。
勢いよく離れたせいで、背中をテーブルにぶつけてジンジンと痛みだす。

「雅樹~?いるんでしょ?」

返事のない俺に再度呼び掛ける母さん。
コンコンッとノックの音もした。

「い…いるよ!すぐに取りにいくから!!」

慌ててドアの向こうにいる母さんに返事をした。
すると、キッチンの方へ向かっていく足音が聞こえ、遠ざかっていった。

「…ケーキ取ってくるね!!ちょっと待ってて!!」

沙菜の返事も聞かずに部屋を出た。
バタンッ!
勢いよく閉めたドアの前で立ち止まり、背を預けた。
ズルズルとその場にしゃがみこみ、今まで自分がしていたことを思い出して顔を熱くした。

・・・俺いま・・・何してた?
沙菜に・・・何度キスした・・・?

今になってドキドキと心臓がうるさく波打つ。

母さんが来なかったら・・・ヤバかった
止まらなかった気がする

ふぅ
深く呼吸をして自分を落ち着けてキッチンへとケーキを取りに向かった。
顔が赤いのが母さんに気づかれませんようーに・・・
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