愛しいキミへ
すぐに返事をしなかったことに小言を言われて、ケーキを貰い部屋へと戻った。
部屋で待っていた沙菜は、下を向いて何かを見ているようだった。

「沙菜?ケーキ持ってきたよ。」

甘いもの大好きの沙菜。
いつもは満面の笑みで喜ぶのに今日はケーキを見ないで俺をじーっと見てきた。
さっきのことがあり、俺が照れて顔をそらした。

「なに?食べないの?」
「雅樹…K大志望なの?」

え・・・?
沙菜の手元には模試の結果。
取られていたことを、すっかり忘れてた・・・

「悠ちゃんと同じ大学志望なの?」

見られた・・・
きっとE判定の結果も見られている。
悠兄が合格した大学に学力が足りないなんて、知られたくなかった。
それに・・・なんで行きたいのか・・・わからなくなっていた。
昔から目標だった悠兄が受かったと聞いて「俺も目指したい」そう思ったのは確かだけど・・・

悠兄との差を見せつけられた───

そんなショックが大きくて・・・
俺はどんなに頑張っても【悠兄】にはなれない。
だったら、K大を目指す意味は何・・・?

「雅樹もK大に行くの?」

返事のない俺に質問を繰り返す沙菜からは、不安の色が見える。
K大受験をしてから悠兄が冷たくなったと言っていた。
だから沙菜にとって【K大】が悲しい記憶の欠片になっている・・・。
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