愛しいキミへ
「なに言ってんだよ!俺がK大に行けるわけないじゃん。結果見たろ?」

──そんな沙菜に「K大に行きたい」なんて言えるわけがない
ケラケラと笑って嘘をついた。

「え…。でも、志望校だから判定してるんじゃないの?」
「悠兄の行った大学がどんなものなのか知りたかっただけ!俺の志望校はこっちだよ。」

第二・第三希望の大学名を指差す。
先生に勧められていた大学だった。
それを見て沙菜の顔がパッと明るくなるのがわかった。

「M大は私の志望校だよ!私は幼児保育だから学科は違うけど…雅樹と一緒なの嬉しいな♪」
「そうなんだ!じゃあ迷ってたけどM大に決めて勉強しようかな♪」

にこにこして喜ぶ沙菜に、もう本当のことは言えない。
一緒に笑い合って、一緒に喜んだ。
「まだ受かってないから喜ぶのは早いか。」と言いながらも笑顔の沙菜がすごく愛しかった。

もうK大・・・悠兄と同じ大学を目指す意味はないんじゃないか?
沙菜は俺のそばにいてくれている。
だったら、沙菜が喜んでいるM大・・・沙菜と同じ大学を目指すべきなんじゃないか?

───嘘を本当にしよう

「一緒に受かって、一緒にいような。」

沙菜の肩を抱き寄せた。
俺に寄りかかり、「うん。」っと返事する沙菜。
優しく頬にキスをする。
唇にしなかったのは、また止まらなくなってしまう気がしたから。
すると、沙菜も俺の頬にキスをしてくれた。
触れるか触れないかの控えめなキスだったけど、沙菜からの初めてのキスが嬉しかった。

幸せだった。
もう俺は悠兄になろうとしない。
俺は沙菜のそばにいれば良いんだ
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