愛しいキミへ
「さっきから何回呼んだと思ってる。次の文を訳せ。」

今は英語の授業中。
机の上に教科書を開いている。
・・・が、全く話を聞いていなかった俺は【次の文】がどれなのかがわからない。
オロオロと無言でいる俺。

「…訳がわからないのか、訳す文がわからないのか…正直に言ってみろ。」
「…訳す文がわかりません。」

先生に静かに聞かれ、正直に答えた。
視界の端に見える直哉がニヤニヤしているのがわかる・・・。

「授業を聞いてなかったのを認めるんだな?」
「…はい。」
「まったく…89ページの三行目だ。」

慌てて教科書を見ると、開いているページすら違っていて、急いで言われた文を探す。

「今言ったところから次のページまで全部、藤川が訳せ。」
「は!?」

全部!?
いつもは二行分じゃん!!
訴えるように顔をあげた。

「…授業を聞いてなかったことはそれで許すから訳すこと。」

にっこりと微笑んで言われる。
笑顔で言われるほうが怒られるより怖い・・・。
クスクスとクラスメイトの笑い声が聞こえるなか、言われた通り二ページ分を訳す。

俺の訳でほぼ授業は終了した。

最後に
「受験が近いからって、学校の授業をおろそかにしないように。」
と、先生が残した言葉が耳に痛い・・・。
< 173 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop