愛しいキミへ
「人をカイロの代わりにしないでくれる?」
「沙菜だって、暖かいんだからいいじゃん。」

顔をあげて、冗談混じりの抗議をする沙菜。
すごく近い距離にハッとする。
沙菜がほのかに頬が赤くなるのを見てから、顔を近づけた。

優しく触れたキス。

キスをしたあとに沙菜と目が合うと、いまだに照れてしまう。
何度キスをしても、この恥ずかしさには慣れない。

沙菜も照れるのだろう。
俺から離れて、雪の降る空を見上げた。

「ずっと降ってるね。積もるかなー?」
「少しくらい積もりそうだよね。」
「あっ!!お母さん達、大丈夫かな?電車で出掛けてるけど…。」

心配そうな顔で訪ねてくる。
・・・母さん達のことなんて考えもしなかった
家族思いなところもいいなぁ~・・・なんて考えてしまう。

「これくらいの雪なら大丈夫でしょ。もし電車止まっても、大人六人だよ?なんとかするって!」
「そう…だね。タクシーでも何でも使えるもんね♪」
「そうそう。母さんだけだと頼りないけど、父さん達がいるんだし……っハックション!!」

くしゃみと共に体がブルッと震えた。

「雅樹、大丈夫!?」
「だいじょう…ックション!!」

ずっと雪の中にいて、体が冷えきってしまっているようで、何度かくしゃみが止まらなかった。

「寒いし、そろそろ部屋戻ろうよ。受験前に風邪ひいたら大変だよ!」
「…そうだな。ケーキだけでご飯もまだだし、帰ろうか。」

鼻をすすりながら、家に戻ろうとする沙菜のあとを歩いた。
冷えてしまった手をパーカーのポケットへ入れる。
すると、手になにか当たるもの・・・。

沙菜が屋上の扉を開けよとした───
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