愛しいキミへ
「…ごめん。追い詰めるようなこと言って。でも、俺は雅樹にしかっりして欲しいんだ。」

そう言うと直哉は立ち上がり、俺の肩を叩いた。

「俺は雅樹の味方だ。いつでも話を聞くし、いつでも一緒に泣いてやる。だから…今は考えろ。自分のために。」
「直哉…。」
「…話はそれだけ。じゃあ俺は帰るわ。」

椅子を元の位置に戻して、直哉は帰っていった。
突然来て、突然帰って、嵐のような直哉には驚くだけだった。
でも・・・話をして、話を聞いて、なんだか気持ちが落ち着いた気がする。
俺のために泣いてくれる奴がいるんだと思うと、元気が出る気がした。

「自分のために考える…。」

考えてみれば───
沙菜と付き合ってから、沙菜のことばかり。
何でも沙菜のことを中心に考えていたと思う。
受験も自分の気持ちなんて、いれていなかった。

どうすれば沙菜に嫌われないか
どうすれば沙菜に想われるか

そんなことばかりだった。
沙菜のことを考えないで、俺の気持ちと向き合う。

俺は何がしたい・・・?
何になりたい・・・?

今なにをしたい・・・?


ゆっくり時間をかけて考えた。



───答えは決まった



部屋を出て、リビングへと向かう。
洗濯を畳む母さんと、もう年末で仕事が休みになっている父さんがビールを飲んでいた。
引き込もっていた俺の姿に、父さんと母さんが目を合わせる。

正座をして二人に向き合った。

「父さん、母さん。お願いがあります。」

俺の出した答えを、両親に伝える───

「浪人させてください。」
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