愛しいキミへ
それぞれの道
───三月
暖かなそよ風を感じられるようになってきた。
今日は俺の高校の卒業式。

「直哉、泣きすぎだから!」

式が終わり、部室や教室など生徒それぞれ思い出のある場所で最後の別れを惜しんでいる。
俺は教室にいて、隣で目を赤くした友達に声をかけていた。

「そんなに泣いてないし!てか、なんで雅樹は泣いてねぇんだよ!?」
「なんでって言われても…年末に泣きすぎて、もう涙が残ってなかったんじゃね?」

ケラケラと笑い合う。
この教室で直哉と笑い合えるのは、今日で最後か・・・
そう思うと少し寂しくなり、最後の教室を見渡した。
胸に赤い花をつけた同級生。
先輩に会いに来ている後輩たちの姿もあった。

「こうやって直哉と同じ学校に通うのも最後だなー。」
「そういう寂しいこと言うなよ~。」
「悪い。でも、会えなくなるわけじゃないし、悲しくはないよ!」
「…そうだな。」
「あっ!最後にさ、いつもの場所行かね?」

俺の誘いに笑顔で「行く!!」と言ってくれた直哉。
二人で教室を出てて【いつもの場所】に向かう。
はっきりと言わなくても、自然と同じところを目指して歩ける。
こういうのを以心伝心って言うのかな♪

着いたのは屋上。
高校三年生の一年間、昼休みのほとんどをこの場所で過ごした。

「…ここも今日で最後かぁ~!!」

青空を見上げながら、直哉が叫ぶ。
他にも何人かいた生徒が直哉を見た。
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