愛しいキミへ
時間が経つにつれ、わかった。
3人仲良く、楽しく、遊園地で遊んでる様で違うんだ。
もう・・・2人との距離はこんなにも離れていたんだ。
沙菜の気持ちに入り込むことなんて出来ないんだ。


日が沈みかけ、空が赤に近いオレンジ色になった頃。
俺は、2人といることに限界を感じ、口を開いた。

「…俺、先帰るわ。」

思ってもいなかったんだろう。
びっくりした顔の沙菜と悠兄。

「なんで!?まだこれから、花火とかあるんだよ!最後まで遊ばなきゃもったいないよぉ〜。」

沙菜は、ぶーっと口を尖らせる。
いつもは可愛く感じた、その表情も今は何も感じない。
早く一人になりたかったんだ。

「…用事思い出した。悪い。」

帰ろうと出口のある方を向き歩き出す。
すると、ぐいっと肩を掴まれ、悠兄の顔を見せられる。
その表情は、怖かった。

「…ここじゃ邪魔。ちょっと来い。」

道の真ん中で帰ると言い出した俺を引っ張っていく。
悠兄は、有無を言わせない雰囲気で、俺の腕を掴んでいた。

喫煙所の近くのベンチ。
忙しく歩く人並みから外れ、少し疲れた顔をした人が多くいる場所。
ベンチに座った悠兄。
その目の前で立ち尽くす俺。
俺の横で、不安そうに見つめている沙菜。
重苦しい空気を破ったのは、悠兄の言葉だった。
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