愛しいキミへ
「どうしても行きたいんだ。お願いします。浪人させてください!」

頭を下げて頼んだ。
すると、ずっと黙っていた父さんが口を開いた。

「…その決断は変わらないんだな?」

普段あまり話さない父さんからの真っ直ぐな視線は、威厳がありそらしたくなる。
それでも真っ直ぐと視線を返して、返事をした。

「あぁ。絶対に受かってみせる。」

俺の返事を聞いて、ふはっと笑顔になった父さん。

「いいじゃないか。やってみれば。予備校代を出すぐらいしか手助けはできないが、とことんやってみろ。」
「ちょっと…!あなた…なに言ってるの!」
「今まで非行に走らず、わがままも言わなかった雅樹だ。これぐらいのわがまま通させてやれ。」

反対をする母さんを笑顔でなだめてくれた。
嬉しくて、また泣きそうになったが、親の前だ。
ぐっと堪える。

「頑張れ雅樹。でも、逃げ出したら許さないぞ。」
「…わかってる。ありがとう。」

こうして、俺は浪人することになった───




「俺が浪人するって決めたんだ。直哉の責任じゃないよ。」
「…すっきりした顔しやがって。」
「まぁな♪」

目標を作ったら、気持ちがすごいスッキリしていた。
泣いてばかりだったのが嘘のように、勉強に集中する毎日になっていたのだ。

「俺は受験が終わってから、雅樹と遊ぶのを楽しみにしてたんだぞ!!」

両肩をつかまれ、激しく揺らされた。
直哉は第一志望の大学に見事合格。
4月からは無事に大学生となる。
それまでの間、本当だったら受験を終えた俺とたくさん遊び回っている予定だったらしい。
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