愛しいキミへ
改札の近くで歩みを止める。

「ここで良いよ。今日はありがとうね。」
「あぁ。こちらこそありがとう。笑ってくれて嬉しかった。」
「雅樹くん…一つだけ聞いていい?」
「なに?」

鞄を持つ手にギュッと力が入ったのがわかった。
躊躇いながら聞かれたこと──

「私と付き合ったこと後悔してない?」

──ということだった

由香利をたくさん傷つけて「付き合うべきじゃなかった」と思ったことは何度もある。
でもそれは由香利を傷つけたことを後悔しただけ。

付き合っている頃は、笑顔で隣にいてくれたキミに何度も癒された
好かれる幸せを教えてくれた
・・・思い返すと、楽しいことがたくさんあった
だから───

「後悔なんてしてないよ。俺なんかと付き合ってくれてありがとう。」

俺なんかを好きになってくれてありがとう
この気持ちでいっぱいだ

俺の言葉を聞いて、涙を浮かべながら微笑んだ。

「そう言ってくれて良かった。」
「…由香利は後悔してないの?俺と付き合って…悲しい想いばかりして…。」
「してないよ!少しでも雅樹くんといれて幸せだった!」
「そっか…。良かった。」

ホッと安心をした。
その直後、急になにかに気づいたようだ。

「あっ!でも…一つだけ後悔と言うか…悔いが残ってることが…。」
「え!?なに!?俺に出来ることだったら今言って!」

悔いのないようにしてあげたい
そう思って聞き返した。

すると・・・
由香利が俺に近づいて───
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