愛しいキミへ
「はい。また麦茶だけで悪いけど。」

戻ってきた悠兄に麦茶を渡され一口飲んだ。
悠兄も麦茶をゴクリと飲む。

「…で、雅樹は別れた理由を知りたいんだっけ?」

まだ麦茶が入っているコップをテーブルに置いて話を始める。

「うん。悠兄から別れるって言ったことしか知らないから…理由を知りたい。」
「そっか。理由ねぇー…何から言えばいいかな…。」

話すことを考えて、悠兄は少しうつむいた。
俺はドキドキしながら返事を待つ。
でも、悠兄はなかなか話し出さない。
そんなに言いにくい理由だったのか・・・?

「…浮気…とかじゃないよね?」
「はっ!?そんなわけねぇだろ!!」
「わかってるよ!冗談だよ!!」

まさか・・・と思ったことをつい言葉にしたら、悠兄に怒鳴られた。
小さく深く息を吐いて自分を落ち着けた悠兄。
今度はうつむかずに俺を見た。

「これだけは言っておく。俺は…本当に沙菜のこと好きだったよ。」

わかってる。
悠兄が沙菜のことを本当に好きだったなんてわかってる。

「別れた時も好きだったよね?」
「…あぁ。好きだった。正直…今も好きだよ。」

やっぱりって思った。
一度コンビニで会ったときの雰囲気から、悠兄がまだ沙菜を好きなのなんて気づいてた。
だから沙菜を振った理由がわからなかった。

「好きなら何で振ったの?」
「それは…。」

悠兄は黙ってしまい、部屋には静かな時間が流れる。
開いた窓から聞こえるセミの声だけが大きく響く。
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