愛しいキミへ
風向きが変わったのか、窓から風が吹かなくなっていた。
だからか額に汗がにじむ。
少し喉を潤そうと麦茶を飲んだ。
すると無言だった悠兄が意を決したように話し出す。

「沙菜が好きなのは雅樹だと思ってたから別れたんだ。」

ゴホッ
思ってもいなかった言葉に驚いて、飲んでいた麦茶でむせた。
はぁ!?
沙菜が俺を好きだから!?!?
そうだったら俺はこんなに悩んじゃいないよ!!

「ゴホッケホッ…なに言ってんの!?沙菜が好きなのは悠兄だよ!!だから付き合ってたんじゃん!!」

好きだから沙菜から告白して、付き合って、別れて泣いて、俺と付き合っても別れることになったんじゃん!
悠兄はそんな思い違いで別れを言ったの・・・?
驚き慌てる俺を前に、悠兄は冷静だった。
ティッシュの箱を差し出してくる。

「そんなに慌てなくても…俺はそう思ったんだよ。」
「なんでそんな風に思うんだよ!沙菜から告白してたじゃん!!」

差し出されたティッシュを無視して詰め寄る。

「…ちゃんとわけを話すから落ち着け。」

落ち着いてなんかいられないけど・・・悠兄に睨まれたらこれ以上詰め寄れない。
もう一度、麦茶を飲んで自分を落ち着けようとした。

ピピッとクーラーの電源を入れて、立ち上がり窓を閉めた悠兄。
動きながら質問をする。

「沙菜がさ…俺を【悠ちゃん】って呼ぶことは知ってるよな?」

クーラーから涼しい風が当たる。
涼しくなると心も落ち着く気がした。

「あぁ知ってるよ。それがどうかした?昔からそうだよね?」

悠兄はさっきまで座っていたところにまた座った。
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