愛しいキミへ
「小さい時からそうだった。雅樹もずっと【悠兄】って呼んでたよな?」
「うん。そうだよ。」

思い出の中で俺はいつも【悠兄】と呼んでいる。
沙菜も【悠ちゃん】と呼んでいた。

「なんでそう呼ぶようになったか…覚えてない?」

悠兄に聞かれて記憶を巡った。
え・・・っと
なんでだっけ・・・?

「全然覚えてない…。」
「そっか。じゃあなんで沙菜が【悠ちゃん】って呼ぶかもわかんないよな。」

何かを思い出している悠兄。
その顔は優しいお兄さんだった。
・・・お兄さん?

「…悠太お兄ちゃん…。」

ポツリと呟いた言葉を悠兄は聞き逃していなかった。

「思い出したみたいだな。」
「うん…。今まで忘れてたけど…思い出した。」

そうだ
思い出した
それは小さな頃の記憶────



『悠太お兄ちゃん!』

幼い俺と沙菜は悠兄のことを悠太お兄ちゃんと呼んでいた。
一つ年上の悠兄のことを母さんが【お兄ちゃんだよ】と話したのがきっかけだったと思う。

この日は三人の母親が見守るなか、マンション近くの公園で遊んでいた。
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