愛しいキミへ
「それでも付き合ってるのは俺だって気持ちだった。…雅樹のライバル宣言のあとは三人でいたくなかったけどね。」

知らなかった悠兄の気持ち───
それがだんだんと言葉になって俺に伝わる。
悠兄が三人でいるのが嫌だったなんて・・・

「だから沙菜とキスした。…雅樹が公園にいるのが見えてて…いるのがわかってキスしたんだ。」

あの卒業式の前日のこと?
悠兄は俺が見てるのをわかってたんだ・・・
見せつけたってことかな

「あの時は疑わなかったよ。沙菜は俺が好きって思ってた。」

そうだよ
それが正しいんだよ
沙菜は悠兄のことが好きなんだよ

「でも雅樹に彼女が出来た頃…沙菜が寂しがった…。俺といるのに寂しいって呟くようになった。」

悠兄の顔から笑顔が消えた。
沙菜が・・・寂しがってた・・・?

「それで思ったんだよ。沙菜が俺を好きなのは、兄を大切に思う気持ちを勘違いしているんじゃないかって。それでも…沙菜と離れたくなくて、何も言わずに付き合い続けた。」

悠兄・・・
あまりにも悲しい顔をするから、俺まで悲しくなる。

「まぁ…彼女が出来ても、雅樹が沙菜を好きなのわかってたよ。だから沙菜と離れようって決めたんだけどね。」
「なんで…わかってたの?俺が沙菜を想い続けてるって…?」

思わず口を挟んだ。
由香利と付き合ってるときは、沙菜への気持ちを隠してるつもりだった。
なんで悠兄はわかったんだ・・・?

俺の言葉を聞いて、悠兄が笑った。

「俺と沙菜から距離をおいただろ?それが不自然すぎだよ。それにお前の彼女の…由香利ちゃん?が俺に言いに来たから。」
「は!?なにを!??」
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