愛しいキミへ
由香利が悠兄に何を言ったんだ!?
焦る俺を見てニッコリとして、悠兄が話す。

「『雅樹くんは沙菜のことが好きなまま私と付き合ってます。…先輩は絶対に沙菜を離さないで下さい。』だってさ。可愛いじゃん。雅樹のこと本当に好きなんだってわかったし。」
「由香利がそんなこと言ってたのか…。」

いつも笑顔でいたのに・・・そんなに不安がってたんだ
今はもう和解してるけど、俺は本当にひどいことをしたんだな・・・

「由香利ちゃんには悪いけど、受験を理由に距離をおいた。一人暮らしをしようとしたのも離れるための理由。」

沙菜が不安がってた頃だ
悠ちゃんが距離を取ってるって俺に言ってきた
沙菜の勘違いだって言っていたけど、本当に距離をおいていたんだ

「距離おいたり、離れるって決めてからも、別れる直前まで未練たらたらだったけどね。」
「だから…誕生日に指輪をあげたの?」
「そうだよ。あげるか迷ったけど、彼氏として最後にプレゼントをあげたかったんだ。」

わからなかったことが全部繋がった気がした。
なんで別れる直前に指輪をあげたのかも、悠兄が沙菜に冷たくなったのかも・・・全部わかった。
でも・・・
話を聞いても俺は納得いかない。

「…悠兄は勝手だよ。自分の考えだけで沙菜から離れてさ。」

ふつふつと怒りの感情が湧く。
俺のためみたいに言ってるけど・・・沙菜の気持ちは?

「沙菜が俺と付き合いたいって言った!?好きだって言った!?悠兄の判断だろ!!それに…別れるって決めてたんなら、指輪なんてあげんじゃねぇよ。最後に沙菜の気持ちを捕まえるなよ!!」

あの指輪が俺と沙菜に壁を作った。
悠兄の気持ちをいつまでも沙菜が大切に持ってる。
どこが俺のためなんだよ・・・!

怒る俺を冷静に見つめる悠兄。
もう冷たくはない麦茶を悠兄は飲みきった。
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