愛しいキミへ
どうやって家まで帰ったか、覚えていない。

いや、きっと無意識でも、行きと同じように電車に乗って、駅からマンションまで歩いたはずだ。
けど、ごちゃごちゃになった頭じゃ、自分の行動なんて認識出来るわけない。

ドサッ
家に着くと着替えもせず、ベッドに仰向けに横たわった。

「…俺は…何やってんだよ…っ!」

両手で前髪を掴み、ぐしゃぐしゃにした。
感情的になり、楽しい雰囲気をぶち壊しにしてしまった。
俺は、その場から去ったから、まだ良い。
残された悠兄は?
不安に1人、待たされてる沙菜は?
2人はあの後、遊園地の残りの時間を、楽しめたのか・・・?

それに─
言ってしまった──

ずっと大切にしていた想い──

悠兄には、逃げてないって言った。
でも、本当に逃げていたのは、俺なのかもしれない。
振られるのが怖くて、伝えようとしたことはなかった。
沙菜の想いから、目をそらしてした。
幼なじみという関係に甘え、傍にいようとしていた。
諦めきれない想いを、抱えたままでいた。

新しい想いを探していた・・・悠兄の方が、よっぽど前に進もうとしていたんだ。

悠兄は本当に、心から沙菜を好きでいる。
その想いは、沙菜も同じものだ。
ずっと一緒にいた、あの2人ならきっと上手くいく。
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