愛しいキミへ
「…雅樹に質問。本当に沙菜と付き合ってないの?」

突然、悠兄から質問される。
沙菜に言うなと口止めされていたから・・・一度嘘をついたことのある質問だった。

「…付き合ってない。」
「本当か?今日は正直に話すって約束だろ。」

これを聞くために【雅樹も本心で】って言ったのか
嘘はついてないけど・・・正直になるか

「今は本当に付き合ってない。…悠兄と別れた日から受験前までは…付き合ってたけど…。」
「やっぱりそうか。じゃあ一度コンビニで会った時、嘘ついたな?」
「それは…ごめん。沙菜に口止めされてたから…。」
「…何で別れたんだ?」

正直に別れた理由を話した。
クリスマスのこと・・・卒業式のこと・・・指輪のこと・・・
全部隠さずに話した。
一通り話して、俺も麦茶を飲みきる。
ぬるくなった麦茶はおいしくなかった。

「悪かったな…。俺があげた指輪が二人の邪魔するなんて思わなかった。」

俺の話を聞いた悠兄は気まずそうに謝った。
その謝罪に、俺は顔を横に振る。

「悠兄は悪くないよ。沙菜が悠兄を好きなだけで…指輪がなくても別れてたと思う。」

そうだ
さっきは怒りに任せて指輪のせいにしたけど、それは違う。
沙菜が俺じゃなくて悠兄を好きなだけの話。
俺に勝ち目がなかっただけだ。
悲しくなって下を向いた。

「俺はそうは思わないけどな。」

軽くため息をついて悠兄が言う。
俺が顔をあげると、コップを持って立ち上がっていた。
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