愛しいキミへ
「じゃあ~俺が沙菜に会いに行こうかな。雅樹じゃない奴なら、沙菜を譲る気なんてないし!」

ピピッと携帯を操作する。
それをとっさに俺は止めた。

「…悠兄は沙菜に会いに行かないでよ。」
「なんでだよ。雅樹が沙菜を放置するなら、俺がそばにいる。」
「放置してんじゃない…でも…悠兄には勝てないんだよ。自信なんて持てないんだよ…っ!」

俺の言葉に驚く悠兄。
大きなため息をついた。

「さっき言っただろ?俺は雅樹が羨ましかったって。勝ちも負けもないよ。」

ぐいっと俺の顔を両手で掴み、悠兄から顔をそらせないようにされた。

「俺は雅樹達と対等になりたいっていつも思ってた。兄じゃない、ただの【幼馴染み】になりたかった。」
「悠兄…。」
「そう呼ぶなよ。…それじゃいつまでも兄でいないといけないだろ?」

俺の顔から手を離した。
悠兄は笑っているけど・・・すごい寂しそうな顔をしていた。

ずっと憧れの存在だった。
いつも俺にとって優しい兄だった。
その思いが悠兄にとって壁になっていたなんて・・・思わなかった。

ずっと呼んでいた呼び方を変えるのは変な感じだし、緊張するけど・・・
悠兄が望むなら、俺たちの関係を変えたい。

「ゆ…悠太…。」

初めて呼び捨てにした。
悠兄は目を開いて驚いていたけど・・・すぐに笑顔になった。
その笑顔はいつもより幼く見える満面の笑み。
名前を呼んだだけで、こんなに喜んでくれるなんて思わなかった。
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