愛しいキミへ
「あぁ思ってるよ。俺から離れれば、沙菜は自分の気持ちに気づくと思った。」

昼間聞いた時と変わらない返事。
嘘をついてると思ったわけじゃないけど・・・やっぱり本当のことだったんだって思った。

「…悠太はそれでいいの?沙菜のこと好きなんでしょ?」
「好きだよ。今でも変わらない。…雅樹もそうだろ?」
「そうだけど…沙菜が俺を好きだなんて、どうしても考えられなくて…。」

悠太の考えが違っていたら・・・
でもその通りだったら嬉しい・・・
色んな考えが頭を巡る。

すると悠太が突然大声を出した。

「あぁ!もう!雅樹はうじうじ考えすぎなんだよ!好きなら好きって、沙菜に会いに行けばいいだろ?」

ベッドの方を見ると、悠太は起き上がり俺を見下ろしていた。
つられて俺も起き上がる。
見えた表情は真剣そのもの。

「雅樹がそんななら俺が沙菜に会いに行く。他の誰かになんて渡さねぇ!…そしたらもう、雅樹にも渡さないよ?」
「悠太…。」
「兄ぶって身を引いたけど…もう兄ぶらないからな。沙菜の本心なんて考えない。俺だけを見るように言うよ?」

悠太の言葉に、思わず立ち上がった。
ベッドに座っていた悠太を後ろの壁に押し付ける。

「…いやだ!もう誰かと一緒の沙菜を見たくない…っ!!」

思ったことをそのまま口にした。
真剣だった悠太の顔が緩む。
俺の腕を強く掴んで話す。

「それでいいんだよ。自分の気持ちに正直になればいい。余計なことを考えるな。」

悠太の言葉に俺の力が抜ける。
掴んでいた腕を離して、トンっと悠太に軽く押された。
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