愛しいキミへ
「まさか…沙…。」
「…由香利ちゃんなんだ。」

・・・・・由香利?
俺はてっきり沙菜だと思ったから、拍子抜けする。
言いにくい相手なんて沙菜しか思いつかなかった。
考えが当たってなくて良かったと、胸を撫で下ろす。

ホッとする俺を見てタケが不思議そうにしていた。

「…驚かないのかよ。」
「驚いてはいるよ。由香利を好きだなんて知らなかったし。ただ何で俺に言いにくそうなんだよ。」
「だって元カノじゃん。自分の友達が元カノと付き合うって嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ。むしろ由香利の相手がタケで良かったと思ってる。」

たくさん傷つけてしまった由香利。
最後に会ったとき、新しい恋を見つけると言っていた。
由香利に彼氏ができるなら、由香利を幸せにしてくれる良いやつだといいなって思ってたから、タケで良かったと思ったんだ。
友達思いの、すごい気の利く優しいタケ。
きっと由香利を大切にしてくれる。

「そう言ってくれて良かったわ。」
「俺がひどいことしたんだから、次の恋をとやかく言えねぇよ。…いつから好きなの?」

俺からの質問に顔を赤くしたタケ。
暗いからわかりづらいけど・・・これは耳まで真っ赤だな。
タケは照れながら答える。

「雅樹とのことを相談のってて、一途に恋する由香利ちゃんを見てたら…いつのまにか惚れてた。俺のことを好きになって欲しくなったんだよ。…ってやめようぜ!!めっちゃ恥ずい!!」

穏やかな顔で話していたかと思えば、急に照れて慌てて話をやめる。
タケのこんな姿は初めてで、すごく可愛らしいと思ってしまった。

「良かったじゃん。…俺は傷つけちゃったけどさ…タケは由香利を笑顔にしてあげてよ。」
「あぁ。そのつもり!やっと振り向いてもらったんだ。…大切にするよ。」

タケなら大丈夫。
きっと由香利は幸せになれる。
今度は俺が二人の相談にのったり、中を取り持ったりしたいなって思ったけど、元カレじゃいらないかな。
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