愛しいキミへ
詳しい話はまた今度となり、この日はタケと別れて帰宅した。
友達の嬉しい知らせにウキウキしながら家に入った。

夕飯がまだだった俺はリビングに向かう。
洗い物をしている母さんだけがいた。

「ただいま。父さんは?」
「お帰り。上司の方と飲みに寄ってるみたい。ご飯は?」
「食べるからちょうだい。」

ため息をつきながら俺のご飯の支度を始めた母さん。
それを俺はテレビを見ながら座って待つ。
しばらくすると、俺の目の前にご飯や味噌汁が並んだ。

「遅くなって食べるときは連絡しなさい。洗い物してる時に増やさないでくれる?」
「ごめん。ちょっと友達と会っちゃって話してたんだよ。」

いただきますと出されたご飯を食べる。
洗い物の邪魔をされて、少しイライラモードの母さん。
それでも父さんが帰っていないため、話し相手が欲しかったようで、俺の前に座って話し出す。
今日あったことやご近所話。
食べているから、俺は無言で聞く。

父さんは仕事のあとに毎日母さんの話し相手・・・大変だろうなぁ~
なんて考えていると、聞き覚えのある名前を口にする。

「そういえば今日ね、沙菜ちゃんと悠ちゃんに会っちゃった。二人とも大人っぽくなってたわぁ♪」

ピクリと耳が反応する。
・・・沙菜と悠太に会った?

「へぇ~。同じ日に二人に会うなんて偶然だね。」
「何言ってるの?二人一緒に駅前を歩いてたのよ。」

箸を持つ手がピタリと止まる。
一瞬、母さんが何を言っているのかわからなくなった。
・・・だって二人が一緒にいるわけがない

頭がついていかないのに、心は自然と反応をする。
ドクッドクッと強く打つ鼓動がうるさい。

話すことに夢中の母さんは、動きの止まった俺に気づかずに話を続けた。
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