愛しいキミへ
「二人が駅前を仲良く歩いてるところに会っちゃって♪ちょっと私は邪魔だったかしらね。」

動くことも出来ずに、ただ母さんの声を聞く。
何もわからない。
でも箸を持つ手が小刻みに震えていることだけはわかった。

「雅樹は誘われなかったの?昔は三人でいたのに…あっ!!もしかしてまた悠ちゃんと沙菜ちゃん付き合い始めたのかしら!?そしたら雅樹が誘われるわけないわね。」

バンッ!!ガタッ
俺は思わず持っている箸をテーブルに強く置き、立ち上がった。
急に立ち上がった俺に母さんは驚く。
食べかけのご飯をそのままで部屋へ戻ろうと動いた。
けど、そんなことを母さんが許すわけもなく、腕を掴まれて止められる。

「ちょっ…まだ残ってるじゃない!」
「もう腹一杯でいらない。悪いけど片して。」
「そんな子供みたいな…。そんなだから悠ちゃん達から仲間はずれにされるのよ。」

・・・知られねぇよ
母さんの言葉にイラッとした。
掴まれた腕を思いきり振り払い、母さんを見る。
聞きたくもないことを聞かされて・・・ご飯なんて食べられるわけがない。
頭と気持ちの整理がついていないからか、なにも言葉が出てこなかった。

「仲間に入りたいなら連絡すればいいじゃない。雅樹だけいつまでも子供なんだから…。」
「…母さんに何がわかんだよ。二人は俺のことなんてもう忘れてるよ。」

これ以上話をしていると、訳のわからない怒りを全て母さんにぶつけてしまいそうで・・・逃げるように母さんに背を向ける。
もう部屋に戻ろうとリビングを出ようとした。

「忘れてなんてないわよ!新年に渡したお守り!!沙菜ちゃんから預かったんだからね!!!」

俺の背中に向けて伝えられたこと。
ピタリと俺の動きが止まる。
お守りって・・・

「…あのピンクのお守り?」

母さんからだと思ってた、あの可愛らしいお守りが頭に浮かんだ。
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