愛しいキミへ
「こんばんわ。雅樹いますよね?」

聞こえてきた声に、思わず目を開く。
悠兄の声だ・・・
今は会う気分じゃねぇよ

「雅樹。入るぞ。」

俺の意思とは関係なく、部屋へと入ってくる悠兄。
俯いたまま、何も返事をしない俺の横に、腰をおろす。

「お前さぁ〜。電話くらい出ろよな。」

その声はいつも通りの優しさがあった。
遊園地の時の雰囲気は消えていた。

「話したくねぇなら、黙ってて良いから、聞け。」

声の感じでわかる。
俺の方を見ずに、前を向いたまま話している。
話したくないわけじゃない。
ただ、何を言えば良いのか、わからないんだ。
俯いたままでいると、隣で悠兄が話し出した。

「沙菜には、上手く誤魔化しておいたから、心配すんな。ちゃんと遊園地の閉園まで楽しんでたよ。」

─良かった

「悪かったな…。雅樹の気持ちわかってやれなくて…。」

─何で、悠兄が謝るんだよ

「でもな…俺と沙菜は、本当に雅樹がいると楽しいんだよ。ずっと3人だったから、2人だと違和感っていうか…雅樹、何してるかなって思うし、言ってる。」

─わかってる
2人が嘘つくわけねぇことくらい

「雅樹が嫌なら、もう誘わない。でも、俺は沙菜も大事だし、同じくらい雅樹も大事だ。俺にとっちゃ、大事な弟みたいなんだよ。」

─俺だって、沙菜が大事だけど、ずっと幼なじみの関係を大事だと思ってた
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