愛しいキミへ
上着をロッカーに戻して、店内に戻った。

「じゃあバイトのあとにね♪」

俺にだけ聞こえるように呟き、中津さんは仕事に戻った。
俺も次の休憩の人に声をかけて。入れ替わりでレジで働いた。

考えても考えても・・・断る理由が見つからず・・・時間だけが過ぎていく。
聞こえるように「独り身」とか「予定ない」とか言って、自分は楽しいデートに向かった直哉を恨む。
今度、絶対に焼き肉おごらせてやる!!
なんて八つ当たりを考えながら仕事をした。

考え事をしながら仕事したせいで、ちょこちょこミスる俺。
店長に怒られ、二時間の残業を任せられてしまった。
体調不良で一人休んだかららしいけど・・・体調不良が本当かどうか・・・

怒られた後は、もう全部「なるようになる!!」ってことで余計なことを考えないようにして働いた。

中津さんは予定通り、18時で上がる。

「近くで時間潰して待ってるね♪」

また俺にだけ聞こえるように呟いて店を出た。
その様子をいていた先輩に絡まれて・・・誤魔化すのが大変だった。
本人は気づいているのか知らないけど、スタッフ内で人気の存在の中津さん。
美人で性格が明るくて・・・男女ともに人気がある。
そんな人がなんで俺なんかに好意を寄せたのかが、不思議で仕方がない。

「…誰に好かれても、好きな人に好かれないんじゃ意味ないよな。」

ポツリと呟いた言葉は、客からの声に消された。
残りの二時間、きっちりと仕事をこなす。



───二時間後ようやくバイトが終わった。
この後を考えると気が重く、ノロノロと着替えをする。
着替えを済ませて、メールのチェック。
休憩時間にチェックしなかったせいでメールがたくさん届いていた。
新着から順に開いていく。

中津さんから・・・メルマガ・・・直哉・・・
ピタリとチェックする手が止まる。
届くはずのないと思っていた人物の名前があったからだ。
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