愛しいキミへ
「話しはそれだけ。じゃあ、もう遅いし帰るわ。」

話すだけ話して、立ち上がる悠兄。
時計を見れば、すでに23時を過ぎていた。
俺はどんだけ、うだうだ悩んでたんだよ・・・
悠兄がドアノブに手をかけた。

カチャッ
「…ごめん。」

ドアが開いた音と被るように、放った一言。
俺の声を聞いて、帰ろうとしていた悠兄が振り向く。

「悠兄…俺…沙菜のこと好きでいても良い?」

俯いたまま言った。
顔を見るのが怖かった。
誰だって、自分の恋人が他の奴に想われているなんて、イヤに決まってる。
でも・・・俺には、沙菜を想う以外の恋の仕方なんてわかんなかった。

悠兄の気配が近づいくる。
目の前で悠兄が止まった。
殴られても良いように、口元に力をこめる。

ぐいっ!ぎゅーっ
確かに頬に痛みを感じたが、殴れた痛みじゃなかった。
両頬を悠兄につねられた。
痛みで前を向く。
目に入ってきたのは、微笑んでいる悠兄の顔。

「…いしゃいんやけよ。」

痛いんだけどって言うつもりが、頬をつねられていて、上手く口が回らなかった。
悠兄があははっと、声に出して笑い出した。

「何言ってっかわかんねー。」

頬をつねっていた手を払う。
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