愛しいキミへ
「…この指輪…つけてもいい?」
「つけて…くれるの?」

俺からの問いかけに、沙菜はコクリと頷く。

「つけて欲しい。」

俺からの返事を聞いて、沙菜はゆっくりと指輪を左薬指につけた。
・・・二年前に思った通り、指輪は沙菜に似合っていた。

俺も指輪をつけようとする。

「ちょっと待って!…つける前に…指輪の内側見て?」
「え?…俺のには何も彫ってないけど…。」

半信半疑で指輪の内側を見る。
暗くて分かりにくいが・・・二年前にはなかった刻印が確かにある。

「…それを頼みにあの日お店に行ったんだ。…一人じゃ心細くて…悠ちゃんと一緒に…。」
「そこを俺は見ちゃったってこと?」
「そうです…。誤解させてごめんね。」

全てが繋がった。
そっか・・・俺のためだったんだ

改めて指輪をつけて、もう一度沙菜を抱きしめる。

今度は優しく引き寄せて・・・。
ポロポロと涙が流れ続ける。
嬉しさで涙と共に自然と笑顔も溢れた。

「…たくさん遠回りしちゃったね。」

俺に抱きしめられながら、沙菜が言った。
それは嬉しそうな声。

「そんなことないよ。」
「うん…。」
「寒くないの?」
「大丈夫。雅樹が暖かいから。」
「…もう少しこのままでいていい?」
「いいよ。私もこのままでいたい。」

雪が降り続けるなか、二人でずっと抱きしめあった。

もう離れないように

ずっと一緒にいられるように
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