愛しいキミへ
すると、悠兄は俺の前で握りこぶしをつくり、向けてきた。

「…良いじゃん。ライバル。好きでいても良いけど、沙菜を渡す気ないからな。」

にっと笑い、意思を表した。
強い想いを感じた。
悠兄は、やっぱりすげぇよ
俺も握りこぶしをつくり、悠兄の握りこぶしにぶつける。

「…あぁ。サンキュ。」

この日、悠兄と幼なじみでなく、ライバルとなった。
強い悠兄のおかげで、関係はなくならなかった。
次の日は沙菜が家に来た。
俺が遊園地から先に帰った理由・・・腹痛によるものらしい。
聞いた瞬間、思わず笑ってしまった。
悠兄…これって上手く誤魔化したって言えんかな?
笑う俺を、沙菜は不思議そうに見ていた。

「大丈夫?」って心配してくれた。
「お腹痛かったなら、早く言ってくれれば良かったのに。」って少し怒られた。

俺の気持ちは、バレてないみたいだったし、上手く誤魔化されていた。

ライバルになったとはいえ、2人は付き合ってる。
奪おうなんて思っていない。
だから、沙菜に告る気なんて全くない。
ただ好きでいるだけ。
忘れられる日まで、ただ好きでいるだけ。


遊園地の時の気まずさは、3人の中に残ったりはしなかった。
それでも、悠兄と沙菜の2人揃っている時に、俺は一緒にいようとしなかった。。
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