愛しいキミへ
『沙菜ぁ~。先に座ってるねぇ~。』

少し離れたところから、声をかけられる。
女の子が三人いた。

「わかったぁ!すぐに行くねぇ~!」

返事をする沙菜を、じっと見つめる由香利。
俺の心臓はバクバクだった。
これ以上、二人が話したら話をしたら・・・きっとバレる・・・
俺がいつまでも最低な男であることが・・・

「由香利ちゃんに会えて嬉しいなぁ♪雅樹も一緒だなんて驚き!今日は彼女と会うって言ってなかったけ?」
「いや~…うん。言ったような…ないような…。」
「私が彼女だよ。」

少し怒ったような声で由香利が言う。
マズイ・・・

「えっ!?そうなの!?雅樹から、彼女は私の知らない人だって聞いてたから…。ごめん~!」

空気が冷たくなるのを感じた。
・・・由香利の顔を見られない。

「雅樹!由香利ちゃんと私がクラスメイトだったの知らなかったの?」
「…悪い。知らなかったわ。」
「もう~。知ってる人じゃん!びっくりさせないでよ。」
「………っそういえば!今日は悠兄と一緒じゃないんだね。珍しいじゃん。悠兄の受験が終わって、やっと遊べるんだろ?!」

無理矢理、話を変える。
ダラダラと背中の冷や汗が止まらない。

「そうなんだけど…卒業と進学の準備で忙しいらしいんだよね…。今日、断られっちゃった。」

少しうつむき、悲しげな表情になる。
悠兄と付き合ってからこんな表情を見るのは、初めてだった。
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