愛しいキミへ
「嘘でも良いから…私を好きだと言ってください。」

目に涙を溜め、頬を濡らしたまま、にっこりと笑った。
その笑顔は、いままで見ていた由香利の中で、一番可愛かった。

由香利の腕を掴んでいたはずなのに、いつのまにか俺の手から離れていた。
少し距離をとりながら、俺に笑顔を向ける。
・・・何でまだ、笑顔なんだ?
何で俺なんかを好きだと思えるんだ?
一途で純粋すぎる想いに戸惑ってしまう。

「記念日まで会わない。…待ってるから。ここであの日のように、待ってるから。」

それだけを言い、背を向けて歩き出した。

「由香利!」

思わず呼び止めてしまったが、何も言い出せない。
振り向いた由香利は、やっぱりさっきまでと同じ、笑顔だった。

「まぁ~。言ってもらえなかったりしても、別れたりしないけどね~!」

小走りで帰っていく由香利のことを、今度は呼び止めることはできなかった。
・・・いや、しなかった。
一人になって考えたかった。
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