愛しいキミへ
『卒業生退場。』
司会の先生の声ではっとして顔をあげる。
長いはずの卒業式が、あっという間に終わりを告げていた。
拍手のなか、退場する卒業生の列に、また悠兄の姿を見つける。
悠兄は泣くこともなく、凛として前を見て歩いていた。
その姿は、これから自分で前に進み出す、俺の知らない大人の顔だった。
1歳しか離れていないはずなのに、悠兄は俺のどんどん先を行く。
俺はいつも、追いつきたくて追いかけた。
───今日また、追いつくこともなく悠兄との距離は開いた。
「いつになったら、追いつけるんだ?」
ぽつりと呟いた言葉は、体育館の中に響く拍手の音に消されてしまった。
誰に聞かれることもなく、誰に伝わることもなく・・・
司会の先生の声ではっとして顔をあげる。
長いはずの卒業式が、あっという間に終わりを告げていた。
拍手のなか、退場する卒業生の列に、また悠兄の姿を見つける。
悠兄は泣くこともなく、凛として前を見て歩いていた。
その姿は、これから自分で前に進み出す、俺の知らない大人の顔だった。
1歳しか離れていないはずなのに、悠兄は俺のどんどん先を行く。
俺はいつも、追いつきたくて追いかけた。
───今日また、追いつくこともなく悠兄との距離は開いた。
「いつになったら、追いつけるんだ?」
ぽつりと呟いた言葉は、体育館の中に響く拍手の音に消されてしまった。
誰に聞かれることもなく、誰に伝わることもなく・・・