愛しいキミへ
「悠兄~!」

卒業式が終わり、青空のもと別れを惜しみ写真を撮り合う卒業生の中から、悠兄の姿を探し声をかけた。

「おう!雅樹!久しぶりだな。」
「久しぶり!卒業おめでとう!式で泣かなかったね。」
「雅樹と違って、俺はこういうことじゃ泣かないんだよ。」
「俺だって泣かないし。」
「来年の卒業式を楽しみにしてるよ。絶対、雅樹の泣き顔を見に来てやる。」

俺をからかう悠兄と笑い合う。
さっき大人に見えた顔も、今は幼い笑顔をしていた。
ふと、悠兄の制服を見ると、ブレザーのボタンが全てなくなって、前が開いている。
そういえば…式でしていたはずのネクタイもしていない。

「…悠兄は相変わらず、モテモテだね。」
「急にどうしたんだよ?」

それっと、ブレザーと胸元を指差す。

「あぁ~これ?くれって言われたから、あげた。こんなの貰ってどうするんだろうな。」

苦笑いをする悠兄。
・・・確かに女子ってボタンとかネクタイとか貰っていくけど、なんのためなんだろう?
って、そんなことじゃなくて!

「沙菜にあげないで良かったの?そういうの欲しがるでしょ。」

思ったことを、そのまま言葉にした。
中学の時、悠兄の卒業式で貰って喜んでいたことを覚えていたから。
< 58 / 276 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop