愛しいキミへ
「…言われてないから…。」

急に悠兄の表情が変わった。
寂しそうな、辛そうな…そんな表情に。

「…ゆ…」
「そういえばメール。返してなくて、悪かったな。」

声をかけようとした言葉に、悠兄の言葉が被さる。

「一人暮らしのことで、親ともめててさ。家から通える距離だから、一人暮らしする必要ないって言われてて…。わかってないよなぁ~。一人で自由にしたいんだけどな。」
「おばさん達だって悠兄がいないと寂しいんだよ。」
「…わかってる。だから入学と同時にって思ってたけど、しばらく見送ることにしたよ。」

そうなんだ
じゃあ、まだ悠兄はマンションにいるんだ
そのことは素直に嬉しいと思った。
あんまり会わなくなっていても、離れるのは寂しいと思っていたから・・・。
それと同時に頭に浮かんだのは・・・沙菜の顔。
どうしても、悠兄と話していると沙菜の顔が浮かんでしまう。

「じゃあ、沙菜も喜んだじゃない?悠兄が出ていくって寂しがってたし。」

返事はなかった。
・・・なんでだろう
沙菜のことになると、悠兄が辛そうな顔をする気がした。
前は、優しげな表情で愛しそうに沙菜の話をしていたのに・・・
なんだろう・・・この違和感・・・
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