愛しいキミへ
「…っ雅樹!ありがとう!!」

後ろから掛けられた声に振り向かない。
幸せそうな顔を見たらきっと、この胸の痛みに耐えられなくなる。

二人はもう大丈夫
なにも心配する必要はない
沙菜が生まれた、年に一度の大切な日に、一緒に過ごせただけ幸せじゃないか

家に帰り、自分の部屋に入る。
電気をつけてベッドに座った。
もう、流れ出す涙を止めようとはしない。

沙菜のために流す涙は、今日を最後にしよう
だから最後に思いっきり泣こう
ボロボロボロボロ
拭うこともせずに、恥ずかし気もなく泣き続けた。


俺には優しくそばにいてくれる由香利がいる
もう悲しむ必要なんてないんだ

───初恋から卒業するんだ
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