愛しいキミへ
強がり
あの雨の次の日、沙菜は熱を出して学校を休んだ。
俺も微熱があったが「自業自得だから休ませない。」という母さんの一言で無理矢理登校した。
鼻はズルズルだし、頭は重いし、大掃除サボったことで担任に呼び出されるし・・・最悪だった。
担任からの呼び出しが思った以上に長くかかり、帰るのが遅くなった。
コンビニでプリンを買ってから帰宅する。
自宅に寄らずに沙菜の家へと寄った。

「プリンありがとう。寝たから大分よくなったよ。」

笑顔で対応してくれた沙菜は、まだ少し顔が赤かった。
俺も風邪気味だったから、長居はしなかった。

「早く治してさ…二人で出掛けようよ。」
「…うん。」

少し控えめに返事をする沙菜に不安になり、引き寄せて抱きしめる。

「…彼女…になってくれるんだよね?」

小さな声で確認をすると、俺の声に負けないくらい小さな声で「うん。」と返事をしてくれた。



───それからしばらくは一緒にいても気まずさがあった。
でも小さな頃からの関係が、笑顔を作ってくれた。
春休みは二人で過ごす時間を大切にした。


暖かく強い風が吹く4月。
高校三年生に進級した。
二週間もすると、俺と沙菜が付き合っていることは、すぐに噂となり広まった。
悠兄と別れた原因を友達に聞かれ、必死で泣かないように誤魔化す沙菜の姿が痛々しかった。

噂はすぐに落ち着き、今では悠兄の名前を出すやつもいなくなった。
沙菜の辛そうな顔を見ないようになったことが、今一番嬉しいことなんだ。
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