愛しいキミへ
けど・・・言おうとしてることがわかった気がする。
きっと─



─沙菜のこと。


「あのさ…元気にしてる?」
「うん。沙菜なら元気だよ。」

そっか…
小さく声をこぼして笑顔を見せた。
悠兄・・・まだ大切に想ってるんだよね?
まだ・・・好きなんだよね?
じゃあ何で・・・

「…何で沙菜と別れたの?」

心の声がそのまま言葉となって出てしまった。
悠兄は俺が何て言うかわかっていたのか、俺の言葉に驚きも気まずそうにもしなかった。

「雅樹は沙菜とどんな感じなの?付き合ったりしてる?」

俺の質問には答えずに、逆に質問されてしまった。
付き合ってるけど・・・ホントのことは言えない。
沙菜に悠兄だけには言わないようにと、口止めされている。
これが親に内緒の理由だ。
誰かの親の耳に入れば必ず、悠兄にも伝わる。

「何もない。今まで通りって感じかな。」
「そっか。…そうなんだ。」

一瞬、悠兄の表情が寂しそうで悲しそうなものになった。
・・・いや、なったように見えた。
すぐにいつもの笑顔になったから自信はもてない。

「別れた理由は…雅樹がもっと大人になったら教えてやるよ。」
「なにそれ。一歳しか俺ら変わんないし。」
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