紫陽花
今日あなたに会いました。

門出

 今朝も私は朝日と共に起き、爽やかな一日を始めようとしております。
 早起きとは良いものです。

 太陽の光を浴びて、立ち上がり崩れた白い小袖を直しその上から羽織を掴み、肩に掛けて、居間へと向かった。



この屋敷は私の部屋から、居間までおよそ10分ほどかかります。こんなだだっ広い屋敷なかなかないと思います。
 居間の障子の前に立つと、楽しげな笑い声が聞こえた。障子に手を掛けて、ゆっくりとした動作で障子を開けた。
 「あら、おはようございます。千尋さん」
居間の中にはいると、笑顔で母が座っていた。
 「おはようございます。お母様」
 こちらは、母の雅です。
どうでもいい情報ですが、私の知り合いの方々は皆母をみて「優しそうな方ですね」と言いますが、そんなことはございません。 
私に 礼儀作法、茶道、華道、裁縫、和歌、お琴、舞etc・・・・ 
を教えていたのは、母でありお稽古事のときの母といったら、この世の物とはおもえない形相をしていて、まるで鬼神のようでした・・・・・・。それに・・・いや、やめておきましょう。

余談ですが、華月家は古くから続く茶道の家元だそうで ”華月”という苗字は、歴史上の有名人  千利休 からいただいたそうです。でも、本当かどうかはわかりません。
 「千尋さん、ぼけっとしてないで、こちらにおいで!」
 母から声がかかり、母の隣に座った。
 「そろそろ朝餉にいたしましょうか。櫻井君!ちょっときてちょうだい!!」 
 「なんですか?」 
  櫻井君(推定20代後半)どこか、やわらかい雰囲気をもった我が家のバトラー(?)的な存在
 「朝餉を持ってきてもらってもいいかしら?」
 「はい。少々お待ちください」
 
 
 「お待たせしました!」
 「!!!!?」
 え!?もう持ってきたんですか!!?
 「相変らず早いわねぇ・・・・」
 何度櫻井君の持っているおぼんを見ても、美味しそうに白い湯気をたてている白飯、わかめと豆腐で白味噌ベースのお味噌汁、焼き魚(鮭)、漬物がのっている。
 「櫻井君を婿にもらう子は幸せねぇ・・・・」
 そうですね。お母様、私も同感です。 
 「毎朝下ごしらえしてますから・・・・」
 下ごしらえですか!?一体何時におきてるんですか?
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