紫陽花
「お母様そろそろいってきます」
そういって、荷物を掴んだ。
「いってらっしゃい。ああ、そうそう 櫻井君!車の用意は?」
「既に準備してあります」
ほんと何者なんですか?
「お嬢様こちらへ」
櫻井君の声で思考の中断を余儀なくされ、はっ!と我にかえった。
「あ、はい」
外にでるとまだ寒くて、口からは白い息がでた。車のドアを開けてもらい、車の中にはいると、暖房でとても暖かかった。
運転席には櫻井君が座っていた。
「あの・・・櫻井く・・・櫻井さんは、本当になんでもできるんですね・・・」
年上の方なので、”さん”に一応なおした。
「そんなことはないですよ。私にも出来ないことはたくさんありますし。ここの屋敷には何年も勤めていますからね。大抵のことは予測できちゃうんです」
「そうなんですか・・・」 何年もやっていると自然と身体が覚えるらしい。でも櫻井君って(推定)20代後半の筈だけど・・・・・・
「あの・・・・失礼ですが・・・何歳でいらっしゃいますか?」
「え?知りませんでしたっけ?45歳ですよ?」
45歳ですか!?どうみても20代後半ですよ?どうやら 私は櫻井君・・いや櫻井さんには驚かされてばかりです。だから、柔らかい雰囲気なんでしょうか?
「お嬢様、着きましたよ」
「はい」
車のドアが開き外に出る。初めてくる高等部はとても広く感じた。
「お嬢様、こちらを」
「ありがとう」
そういわれ、手渡された番傘を受け取った。日が差してきたのでちょうどよかった。
「櫻井さん、あの荷物を・・・・」
「?私が持っていきますよ」
「いえ、自分で持ちたいんです」
「・・・・・そうですか」
手渡された荷物をもって大きな校門へと歩いた。