彼と彼女
「人生はそんなに甘くねぇんだよ。こんなんで食っていけるわけないだろ。」

「そっか。」

憧れの存在に、現実的な答えを突きつけられて、ちょっとがっかりする。笑うつもりなんてなかったのに、息を吐いたら失笑したみたいになった。

「なんて言ってほしかったんだ。」

あたしの不服そうな顔を見抜いたのか、先生は追及する。

「んー。子どもが好きなのに数学できなかったからー、とか?」

「おまえなぁ…。」

「うそうそ。先生、いつ帰してくれんの?」

「人聞き悪いなお前。それじゃぁ俺が無理やり此処に居残りさせてるみてぇじゃねぇか。」


「だってもう5時だよ。」

黒板の上にある時計を指差した。

「げ、1時間も経ってたのか…。」
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