彼と彼女
◆彼の場合
俺が高校の美術教師になったのは、それなりに好きに創作できるからだ。部活でコンクール目指してる生徒達と一緒に絵を描いたり、長期休みで教室占領して彫刻彫ってみたり。

幸いこの学校の美術教師は俺だけだから、ほかの先生にとやかく言われないし。若いからって世話焼こうとする先生もいるが、やんわり断って準備室へも入れないようにしてきた。

もはやこの美術準備室は今の俺の城。出来るだけ他人は入れたくないし、入りたがる奴もそうそう居ない。

そんなこんなで、俺がこの学校に就職して、立ち位置を築き上げてから、2年が経った。

…3年目にして、あっさりと侵入を許してしまったわけだけど。

ちらりと目の前の少女に視線を寄越す。今の時間は昼休み。場所は美術準備室。部屋にいるのは俺と、こいつ染川悠の二人だけ。
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