彼と彼女
「で。何しに来たんだ?」

朝学校に来る前にコンビニで買ったにぎり飯をビニール袋からつかみ出し、一応聞いてやる。染川は遠慮なく俺の特等席に腰を下ろすと、短いスカートからすらりと伸びた足を組んで、弁当を包む袋をひもといてやがる。

「先生が独り寂しくご飯食べてるってトシ子ちゃんに聞いたから優しい染川ちゃんが一緒にご飯食べてあげよーと思って。」

トシ子…って、あの家庭科教師か。

「いらんことをあのババァ…」

「うわ。トシ子ちゃん傷付くよ。50歳でも中身は恋する乙女なんだからー」

カラカラと笑いながら椅子の上でウィンナーを頬張る彼女。

「おまえ、友達んとこ戻れば?」

「加賀先生がいつも独り寂しく昼ご飯食べてるから可哀相ってゆったらクラスの皆は泣きながら送り出してくれたけど。」

そう言って能天気に飯食いはじめる染川。俺の昼食う場所をさぞ当たり前かのように陣取ってやがる。しかたなしに俺も美術室から椅子をひとつ引っ張ってくる。
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