彼と彼女
思えば初めて会ったときも違和感があった。それは普通の、美術の授業。

最初の授業なんて、軽い自己紹介して、1年通してどんな授業するかとか説明するくらいだ。適当に済ませてしまおうと思ったのに。

[先生ー、お腹痛いんで保健室行って来てもいいですか。]

手を挙げてひらひらと振り、ふざけたこと抜かしたのが染川だった。

最初の授業でこんなこと言う奴、他にいねぇだろ。っていうか、腹痛ぇんだったら授業始まる前に保健室行けよ。

やる気のなさそうな顔をして、立ち上がりながらそう言って勝手に部屋から出て行きやがった。

[悠、大丈夫かな?]

[さぼりじゃねーの。]

どっと笑いが教室内を包む。
変な奴、と思いながらも、クラスの奴らからはちゃんと受け入れられてるようで、しかもどうやらムードメーカーみてぇな位置づけらしい。
< 9 / 11 >

この作品をシェア

pagetop