大好きなあの子
返事に戸惑っているあたしを見かねてか、代わりに矢崎君が口を開いた。
「おまえだろ。」
「!? 矢崎くん!」
「中原は、田原の所為で泣いて、
こんなんなってんだぞ!!」
「・・・・・・なんだよ、それ。」
「俺も詳しい理由は知らないけど
田原の所為で泣いてるのは確かだよ。」
しょうちゃんの、怒りに満ち溢れた顔からどんどん、どんどん表情が曇っていく。
「つーことで、俺が
中原を送っていくから。」
あたしの手を引っ張って
教室を出て行く、矢崎君。
扉の近くに立っていたしょうちゃんの、
横を通り過ぎるとき
なんだか見られている気がしたけど
あたしは、一度もしょうちゃんの顔を見ずに教室を出た。